
第一子を出産し、私は実家で里帰り出産をしました。
あの期間は、本当に幸せでした。
夫の家からは車で2時間ほど離れていたため、彼が顔を見せたのは、子供が産まれた時のたった一回きり。
夫の機嫌を伺う必要のない、穏やかで安心できる日々でした。
しかし、約束の日が来れば、あの家へ戻らなければなりません。
■ 予期せぬ「良いパパ」という仮面
家に戻ると、意外な光景が待っていました。
夫は、子供の面倒をとてもよく見てくれたのです。
満面の笑顔で、たくさんの言葉をかけ、たくさん遊んでくれる。
世間から見れば、どこからどう見ても「良いパパ」でした。
子供が産まれてから、私に対するモラハラの頻度も目に見えて減りました。
嵐のような暴言は鳴りを潜め、一見すると、平和な日々を送っているように思えました。
■ 消えない「心の鉛」と残酷な妥協
でも、私の心は全く回復していませんでした。
これまで浴びせられ続けた、度重なるひどい言葉の数々。
通帳を奪われ、お寿司屋さんのトイレで息を潜めて泣いた記憶。
それらが、子供が産まれたからといってリセットされるわけがありません。
仕事から夫が帰ってくる時間になると、条件反射のように心が「ズン」と重くなる。
玄関のドアが開く音がするだけで、体が無意識にこわばる。
頭では「今は平和だ」とわかっていても、私の体は、彼への恐怖を完全に記憶していました。
それでも、私は自分自身にこう言い聞かせてしまったのです。
「まあ、これくらいなら良いかなぁ。」
「私には冷たくても、子供にとっては『良いパパ』だしね……。」
これが、私が陥った最も恐ろしい罠でした。
「子供のために」という大義名分が、私から「逃げる」という選択肢を完全に奪い去ってしまったのです。
この、かりそめの平和の中で。
私は、二人目の子供を妊娠しました──。