
「一生懸命頑張れば、いつか報われる」
私が長年信じていたその言葉は、あの日、音を立てて崩壊しました。
「5センチの絶望」の翌日。
私はいつものように、駅前で美容室のチラシを配っていました。
皮肉なことに、私はこのチラシ配りが大好きでした。
「あ、飴ちゃんくれた!」
そんな無邪気な喜びで、心の中の巨大な欠損を必死に埋めようとしていたのです。
しかし、駅のホームで線路を見つめた瞬間。
私の中で張り詰めていた「緊張の糸」が、突然、プツンと音を立てて切れたのです。
『……ねぇ。もう、終わりにしよう? このまま知らない電車に乗れば、全部終わるよ』
コミュ障でHSPの私にとって、一番怖いのは「心配されて、想定外の会話が発生すること」です。
「大丈夫?」と聞かれるたびに嘘の笑顔を作ることに、もう精神は疲れ切っていました。
チラシ、スマホ、家の鍵。
「あ……私、これだけで逃げられるんだ。」
そう思った瞬間。
私の足は吸い込まれるように改札を抜け、電車に乗り込んでいました。
職場から、無許可の逃亡(バックレ)を開始したのです。
■ 逃亡、そして「対象を確保」
夜。
あてもなく辿り着いた馴染みの駅で、時間確認のために、ほんの一瞬だけスマホの電源を入れました。
直後。目の前に現れたのは、2人の警察官でした。
👮♂️ 警察官A:
「……凛々さんですね?」
👮♂️ 警察官B:(無線に向かって)
「こちら〇〇。対象を確保。本人は無事です」
……確保。
その無機質な言葉が、私の耳に冷たく響きました。
職場の皆さんが、突然消えた私のために、警察に捜索願を出してくれていたのです。
いじめられたわけじゃない。皆、本当に良い人たちだった。
だからこそ、その「善意」が、当時の私には一番痛いダメージでした。
■ 裏切りの代償
結局、職場には一度も連絡をしませんでした。
髪を切りすぎても見捨てなかった先輩。
いつも笑い合っていた仲間たち。
彼らの信頼をすべて裏切り、私は逃げ出したのです。
「こんなひどいことをした私には、きっといつかバチが当たる」
自分からすべてを壊し、社会的な信用を失った絶望を感じながら、私は自宅で泥のように眠りにつきました。
しかし、現実は私を休ませてはくれませんでした。
美容室から逃げ出した私を待っていたのは、
【残高:数百円】という通帳と、容赦なくポストに投函される「税金」の支払いだったのです——。