
高等裁判所の重厚な扉を開け、私は法廷へ足を踏み入れました。
目の前には、3人の裁判官。
そして、同じ空間には、決して視線を合わせたくない「元夫」の存在がありました。
弁護士先生が用意してくれたカンペ。
コミュ障で極度に緊張しやすい私は、それをボロボロになるまで読み込み、家でも100回以上、頭の中でシミュレーションを繰り返してきました。
「わからないことは、素直に『わからない』と言えばいいんです」
直前に先生からかけられたその言葉を胸に、私は震える声で、それでも練習通りに言葉を紡ぎました。
相手の弁護士から想定外の質問が飛んできても、絶対に焦らない。
質問の意図がわからない時は、パニックにならず「もう一度、質問をお願いします」と落ち着いて聞き返せば大丈夫。
法廷という異様な空気の中で、私が守るべき絶対の優先順位は、「嘘をつかないこと」と「自分を守ること」だけでした。
「それは、わかりません」
「もう一度、質問の意図を教えていただけますか?」
HSPの私が、相手の顔色を伺うことなく、落ち着いて、考えて、答えることができた。
私にできるすべてを出し切り、運命の尋問は無事に終わりました。
再び重い扉の向こうへ出た私の体は、疲労で立っているのもやっとの状態でした。
あとはもう、判決を待つだけ。
3年に及ぶ、この長くて暗い泥沼の裁判。
ついに高等裁判所から、私たちの未来を決める「最終的な判決」が言い渡されることになったのです──。