専業主婦になって、たまの贅沢は外食でした。
その日は、大手回転寿司チェーンへ。
お寿司が大好きな私は、お腹を空かせて、ワクワクしながら席につきました。🍣
彼が先にタッチパネルで自分の分を注文し終えたので、「次は私の番だ」と、自然な動作でパネルを手に取った、その瞬間。
「お前さぁ、何もわかってないんだから、注文すんなよ。」
冷たい声が、家族連れで賑やかな店内に突き刺さりました。
……え? 注文しちゃいけないの?
「わかってない」って、何を?
思考が完全にフリーズし、周囲の喧騒がスーッと遠のいていきました。
HSP特有の敏感なセンサーが、周囲の目を一斉に察知してパニックを起こします。
「怖い。周りの人が見ているかもしれない」
肺に空気が入らなくなり、息が詰まる。
私には、自分でお寿司を食べる資格すらないの……?
異常事態でした。
この場に1秒でも座り続けることは、当時の私には精神的に耐えられませんでした。
■ トイレという名の「シェルター」
私は黙ってパネルを置き、立ち上がりました。
悲しくて、情けなくて。大好きだったはずのお寿司がレーンを回る光景すら、もう視界に入れたくない。
私は逃げるようにトイレへ駆け込み、個室の鍵をガチャンと閉めました。
狭い空間で、ただひたすら時が過ぎるのを待つ。
お腹はペコペコに空いているのに、胃の奥がギュッと縮まって、吐き気がする。
「どうして、普通に食事をすることすら、許されないんだろう。」
■ 虚無の「お会計」
どれくらい時間が経ったでしょうか。
息を整え、ようやく席に戻ると……そこには、すでに自分だけ食べ終えて満足そうな彼の姿がありました。
「どうしたの?」という気遣いも、「大丈夫?」という言葉も、一言もありません。
ただ淡々と、彼一人の食欲だけが満たされた伝票を持って、レジへ向かう背中。
お会計を済ませ、無言のまま車に戻る道すがら。
私の心は、これ以上の傷を負わないよう、完全に感情を遮断していました。
空腹のまま、何も言えずに帰宅する。
これが、私の「幸せなはずの新婚生活」の、残酷なリアルでした──。