7日前

第8話 大好きだったお寿司が「砂の味」に変わった日。逃げ込んだトイレという名のシェルター

専業主婦になって、たまの贅沢は外食でした。

その日は、大手回転寿司チェーンへ。

お寿司が大好きな私は、お腹を空かせて、ワクワクしながら席につきました。🍣

彼が先にタッチパネルで自分の分を注文し終えたので、「次は私の番だ」と、自然な動作でパネルを手に取った、その瞬間。

「お前さぁ、何もわかってないんだから、注文すんなよ。」

冷たい声が、家族連れで賑やかな店内に突き刺さりました。

……え? 注文しちゃいけないの?

「わかってない」って、何を?

思考が完全にフリーズし、周囲の喧騒がスーッと遠のいていきました。

HSP特有の敏感なセンサーが、周囲の目を一斉に察知してパニックを起こします。

「怖い。周りの人が見ているかもしれない」

肺に空気が入らなくなり、息が詰まる。

私には、自分でお寿司を食べる資格すらないの……?

異常事態でした。

この場に1秒でも座り続けることは、当時の私には精神的に耐えられませんでした。

■ トイレという名の「シェルター」

私は黙ってパネルを置き、立ち上がりました。

悲しくて、情けなくて。大好きだったはずのお寿司がレーンを回る光景すら、もう視界に入れたくない。

私は逃げるようにトイレへ駆け込み、個室の鍵をガチャンと閉めました。

狭い空間で、ただひたすら時が過ぎるのを待つ。

お腹はペコペコに空いているのに、胃の奥がギュッと縮まって、吐き気がする。

「どうして、普通に食事をすることすら、許されないんだろう。」

■ 虚無の「お会計」

どれくらい時間が経ったでしょうか。

息を整え、ようやく席に戻ると……そこには、すでに自分だけ食べ終えて満足そうな彼の姿がありました。

「どうしたの?」という気遣いも、「大丈夫?」という言葉も、一言もありません。

ただ淡々と、彼一人の食欲だけが満たされた伝票を持って、レジへ向かう背中。

お会計を済ませ、無言のまま車に戻る道すがら。

私の心は、これ以上の傷を負わないよう、完全に感情を遮断していました。

空腹のまま、何も言えずに帰宅する。

これが、私の「幸せなはずの新婚生活」の、残酷なリアルでした──。