
広い、綺麗、おしゃれ。
彼のマンションに足を踏み入れた時、私はこれから始まる地獄に全く気づいていませんでした。
「今日からここで、幸せな暮らしが始まるんだ……!」✨
婚姻届を出し、キャバクラを引退。
私はニートから一気に、憧れの「専業主婦」へと生まれ変わりました。
掃除をして、ご飯を作り、昼間はのんびり過ごす。
「専業主婦って、最高じゃん!」☀️
そう確信していたのは、最初の数ヶ月だけでした。
■ 豹変する「支配者」
半年が過ぎた頃、平穏な空気が一変します。
優しかった態度は消え去り、投げつけられたのは**「お前」**という見下すような言葉でした。
「お前さ、なんでこんな料理しか作れないの?」
「ほんとセンスない。何やってもダメだな。」
私のHSP特有の敏感なセンサーは、「この人、何かがおかしい」と激しく警告していました。
しかし当時の私は、自分自身にこう言い聞かせてしまったのです。
「養ってもらっているんだから、文句を言っちゃダメだ。私がもっと頑張らないと……!」
またダメ出しされるかもしれない。
息が詰まるほどのプレッシャーの中、私は必死にクックパッドをあさり、メルカリで料理本を買い集めました。
「彼を喜ばせるための料理」に、自分のすべての時間と労力を注ぎ込んだのです。
■ 思考を麻痺させる「アメとムチ」の罠
毎日毎日、必死に勉強して作った料理を否定される日々。
ところが、たまに「今日は自信ないな……」と弱気になっている時に限って、
「今日のご飯、いいじゃん。」
と、気まぐれな称賛が飛んでくるのです。
「下げて、下げて、一瞬だけ上げる。」
このランダムな優しさが、私の思考を完全に麻痺させていきました。
何が正解か分からない。
いや、正解は「彼の中」にしかないのだ。
キャバクラ時代、あんなに必死に保っていた「自分は自分」という軸が。
少しずつ、でも確実に折れていく音が聞こえていました──。